自治体職員の読書ノート

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【2223冊目】町田康『ゴランノスポン』

 

ゴランノスポン (新潮文庫)

ゴランノスポン (新潮文庫)

 

 

短篇集。「楠木正成」「ゴランノスポン」「一般の魔力」「二倍」「尻の泉」「末摘花」「先生との旅」の7篇が収められている。

現代と中世が混然となった「楠木正成」は、語りの芸術ともいえる作品。もうひとつの歴史モノである「末摘花」は、源氏物語の「末摘花」を町田流にアレンジした作品で、源氏物語特有のふんわりとしたまわりくどい文章が、数倍の「くどさ」で語りなおされている。

痛烈だったのは、「毎日に感謝」「日々が充実」と言いながら居酒屋で店員が突然倒れてもそのまま飲み続ける「僕ら」の偽善性をあぶりだす「ゴランノスポン」と、超エゴイストな「生活の化物」(これは中村文則が解説で書いていた表現)を描きつつ、ラストでそれまでの景色が一挙に反転する「一般の魔力」。

現実の反転という意味では、より徹底しているのが「二倍」「尻の泉」の二作なのだが、これはネタバラシをしてしまうと衝撃度が薄まってしまうので、ここまでにしておく。「先生との旅」も、エライ先生(と思い込んでいる相手)とのひきつったような会話が絶妙で、そのシュールさがラストのどんでん返しにうまく効いている。

それにしても、久しぶりに読んだが、やはりこの人の文章は魅力的だ。独特のリズムと語感。特に会話や独語の秀逸さは、もはや誰もマネできないし、してもすぐバレてしまうほどの「町田節」なのだ。

「よかったなあ。助かったなあ。いやあ、よかった。わぎゃ。な、なんで俺を斬る? わぎゃあ。苞のなかから武具が。わぎゃ。たばかられた。これは例によって楠木正成の奇略だ。トロイの木馬のごとき。わぎゃあああ」(「楠木正成」)

 

 

「そうそうそうそうそうそう。なんか有機農法とかやってそうな」
「そうそうそうそうそうそう。着てるものやなんかもさあ、なんかインディアンみたいな」(「一般の魔力」)

 



「はっ。はははははっ。Hahahahahaha。これで僕はいよいよ完全完璧アブソルトリー、シャブ中の変態の犯罪者だ。はははははっ。Hahahahaha。なんてざまだ。なんて愚かなベイビーだ。とんだ座布団十枚だ。はははは。Hahahahahahahahahahaha」(「尻の泉」)