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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2032冊目】江戸川乱歩『幽霊塔』

謎・恐怖・幻想

 

幽霊塔

幽霊塔

 

 
宮崎駿が表紙とカラー口絵を手掛けて改訂、再刊された乱歩の作品。いかにも乱歩っぽいB級テイスト満載の怪奇ロマンだが、もともとはアリス・ウィリアムスンという作家の『灰色の女』がオリジナルで、それを黒岩涙香が翻訳(翻案?)して新聞に連載、さらにそれを乱歩がリメイクしたというややこしい来歴の一冊なのだ。

講談師のようなもってまわった言い回し、くどくなるのをおそれずこってりと塗り固めた大仰な形容詞の嵐は、時代を感じさせるものがありなんとも懐かしい。主人公の北川青年だけはまっすぐで明朗な性格だが、あとの登場人物はあやしげな連中ばかりというのも、いい。ヒロイン?の野末秋子の正体は早々に見当がついてしまうが、それでも最後まで読まされてしまうのは、さすがのストーリーテラーぶりである。

さらにこれを宮崎駿が映画化していればどんなふうになったものか、一度見てみたかった気がする。だいたい、乱歩と宮崎駿という組み合わせが面白く、全然似ていないようでどこか通じるものがある。どんな作品にも「健全さ」がつきまとう宮崎駿にこそ、この不健全感バリバリの乱歩ワールドを映画化してほしかった。