自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1970冊目】星野智幸『呪文』

 

呪文

呪文

 

 

商店街の活性化という「よさげな話」が、あれよあれよという間に、とんでもない狂気と暴走に。いつ、どこからそうなってしまったのか、読んでいて気付かなかったところが恐ろしい。

以前読んだ『俺俺』は、「俺」が増え続けるという非現実の寓話的な小説だったが、本書はひたすらリアルな話。商店街の活性化のため、方針に逆らう者を排除し、「未来系」という自警団のような(というより、戦時中の日本の憲兵や、あるいはナチスのSSのような)組織を生み出していく。町から追放すべき者の家の扉にマークをつけていくところなど、ナチスユダヤ人の家につけた「ダビデの星」を思い出す。

人々は、一部の指導者と、それ以外の圧倒的多数の「クズ」に二極分化し、クズはただ「死ぬ」ことでしか世の中に貢献できないという「思想」が叩きこまれる。それはまさに洗脳そのもののプロセスであって、言い換えれば、いつこのようなことが起きてもおかしくない、ということだ。

日常の、どちらかといえば「良い話」が、あっという間にカルト的な狂気に突っ込んでいく、そのシームレスな展開が恐ろしい。洗脳とか狂気の暴走は、そのへんの商店街でさえ起こりうることなのである。