自治体職員の読書ノート

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【1019冊目】手嶋龍一・佐藤優『インテリジェンス 武器なき戦争』

インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)

インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)

鎖読。手嶋龍一と佐藤優という、日本でインテリジェンスを語るには外せない二人の対談。

本書では、インテリジェンスを「国家の命運を担う政治指導者が舵を定めるための羅針盤である」と定義する。本書はそのインテリジェンスをめぐる現実を、さまざまなエピソードをちりばめつつ語る一冊。

……とはいえ、国家間の「情報戦」をめぐるやり取りを正直に暴露するなど、それこそインテリジェンスの作法に反する。その点、本書はさすがというべきか、「真実」のニュアンスは的確に伝えつつ、具体的な「事実」については実に巧みに覆い隠してみせている。実際、その隠す手際の鮮やかさこそが、インテリジェンス・オフィサーとしての両名の凄味を何より伝えてくれているように思う。

マスコミが報じる表面的な動きの背後に、なんと様々な情報の流れがあり、隠された別の模様があることか。われわれが見ていると思っている世界情勢など、本当にうわべだけのものにすぎないということが、本書を読むと恐ろしいほどよくわかる。とはいえ、本書によれば「秘密情報の98%までは公開情報を再整理することによって得られる」という。インテリジェンスの要諦とは、情報の入手もさることながら、その情報の取捨選択と理解、そしてそれを組み立てる力量にこそあるということだろう。

日本の外務省の悲惨な実態、日本が外交大国・インテリジェンス大国になる道についても、十分なページが割かれている。本書より後に起こった尖閣の問題についても、その糸をときほぐす端緒は本書の中にしっかり触れられている。ぜひ、読まれたい。ニュースの見え方が明日から変わってくることを保証する。