自治体職員の読書ノート

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【991冊目】松岡正剛編集構成『NARASIA 東アジア共同体?』

平城遷都1300年記念出版 NARASIA 東アジア共同体? いまナラ本

平城遷都1300年記念出版 NARASIA 東アジア共同体? いまナラ本

奈良は今、平城遷都1300年でいろいろイベントが目白押しらしい。本書はその一環で、前回に続く2冊目。前作はダブルページを駆使したビジュアル中心の鮮やかなものだったが、今回はぐっと地味に、評論中心の重厚な一冊となっている。

政治、文化、歴史など、40人以上の書き手の豪華絢爛さがまずすごい。経済、政治、文化、社会、情報と、それぞれの分野のトップクラスの論客たちがずらりと揃っており、これほどのラインナップはなかなか見られるものではない(「日本の論点」にちょっと似ているかもしれないが、それよりずっと焦点が絞り切れているし、全体の統一感もある)。知のドリームチーム、知の日本選手権。もちろん内容のレベルには多少のデコボコもあり、正直、途中から読み飛ばしたものもあるが、一方、今まで全然知らなかったものすごい書き手を発見する喜びもある。そして何より、この多種多様な議論の中から、日本とアジアの歴史と現在と未来が立ちあがってくることに驚かされる。

さらに特筆すべきが、その文章の合間にはさまっている図版である。これは日本も含む東アジアのアーティストたちの作品なのだが、これがまた息を呑むほどすばらしいのだ。最初は文章がメインで、図版はオマケ程度に考えていたのだが、見ているとそのうち図版が出てくるのが楽しみになり、場合によっては一枚の絵が近接する論文を「食って」しまっている。それほどの迫力と鮮やかさと深さをたたえた作品ばかり。その向こうに、「論」の文章とはまったく違ったかたちで、東アジアのパワーとエレガンスと、そして底知れぬ可能性がみえてくる。東アジア共同体がどうなるかはわからないが、おそらく東アジアは、政治や経済などの「論」の世界より先に、「感性」と「アート」の世界で交錯し、そこに新たな可能性が萌芽する、そういった形でまずは結ばれていくのではないだろうか。