自治体職員の読書ノート

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【902冊目】佐々木信夫『地方議員』

地方議員 (PHP新書)

地方議員 (PHP新書)

この前に引き続き、議会関連本。こちらは新書で、前半は議会関連の記述、後半は自治体そのものをめぐる現状を広く綴っている。地方議会制度の解説もなされているものの、主眼は、現行の制度や地方議会・議員の現状に対する問題意識。その背景にあるのが、地方分権の進展、とりわけ機関委任事務の廃止だ。これによって、自治体における地方議会の役割は大きく変わった。ところが、執行機関側も住民側も、そして当の議会側すら、そうした変化について行けていない現状がある。

特に著者が主張しているのが、単なる行政のチェック機関に甘んじることなく、自らも政策提言(特に条例案の提出や予算案の策定)や活発な討議を行うべきである、ということ。もちろん、執行機関である首長に大きな権限が与えられている現行の地方自治制度では、行政をチェックする、という議会の役割は非常に重要である。しかし、議会とは本来そういうものではないんじゃないのか、というのが著者の主張。むしろ議員自身の自己研鑽と勉強を踏まえて、行政側の対案となりうる政策を打ち出していかなければならないのではないか、というのである。

とはいっても、そこにはおのずから議会と行政の役割分担があってしかるべきである。そこで著者が提言するのが、政策過程ごとの議会と行政の役割分担。具体的には、政策のフローを「課題設定」「政策立案」「政策決定」「政策実施」「政策評価」の5段階に分け、そのうち「課題設定」「政策決定」「政策評価」を主に議会の役割とし、「政策立案」「政策実施」を行政の役割とする。住民の生の声をすくい上げて政策課題として可視化する「課題設定」、議決機関の本領というべき「政策決定」、チェック機能としての「政策評価」を、政策過程における議会=政治の役割と位置づけるのだ。当然、そこには議員自身の能力向上や議会事務局の充実がなければならないし、政策決定にしても、「与党」「野党」などという枠組みに縛られて、本会議や委員会が結論ありきのパフォーマンスになるのではなく、個々の議員がしっかりと政策討議を行う必要がある。

いずれも同感であり、正論。ただ問題は、「そうしたくない」と議員さんたちが思ってしまえば、いくらでもこれをサボタージュできてしまうことであろう。制度をいくら整備しても、先進的な自治体がいくら議会改革に取り組もうと、知らん振りしようと思えば、これがけっこうできてしまうのだ。したがって、重要なのは議員一人一人、そして議員を選ぶ住民の一人一人の意識である、ということになる。本書のタイトルが「地方議会」でなく「地方議員」であるゆえんは、おそらくそのあたりにあるのではないか。