【901冊目】楡周平『プラチナタウン』

- 作者: 楡周平
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2008/07/23
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (20件) を見る
現役バリバリの商社マンが、いろいろな成り行きが重なって、東北地方にある故郷の緑原町の町長に就任する。そこはご多分に漏れず、過去につくったハコモノに財政を圧迫され、財政再建団体入り寸前の状態になっていた……。
「売れるものは何でも売る」第一線の商社マンと、田舎の町長というマッチングが面白い。「行政に民間のノウハウを生かす」というが、お題目だけではなく、本気でそれをやろうと思うのであれば、この本はいろんな意味で参考になる。高齢化に悩む町に「高齢者施設」をもってくることで問題解決を図る、という逆転の発想もユニークだし、それを支える事業のディテールも説得力がある。自治体職員としては細かい部分で気になるところがないではないが、普通に社会派エンタメとして読めば十分楽しめる。
もっとも、小説としてのデキはどうかというと、ややひっかかる部分がないでもない。一番気になるのは、やたらに事業がすんなり進んでしまい、起承転結でいう「転」がないこと。実際の事業であれば、このようにすんなり進んでくれるのは嬉しい話なのだが、小説として読むと物足りなさを感じてしまう。最後のハッピーエンドを味わうためにも、もっとその前にフラストレーションを感じさせてほしかった。例えば、町議会議員の「カマタケ」にもっと大暴れさせるとか。
行政にビジネスの発想を持ち込む際の具体例にとどまり、そこから先がない。そのため、読みやすいが奥行きが足りない印象が残ってしまった。ということで、小説としてはややイマイチ。しかし、地域おこしのモデルケースとしては、なかなか秀逸。あと、いわずもがなのツッコミをするとすれば「5年間新規採用を凍結」しているはずの町で、クマタケの部下に「大学を出て2年目」の女性がいるのはどういうこと?