自治体職員の読書ノート

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【398冊目】櫻井敬子・橋本博之「現代行政法」

現代行政法

現代行政法

行政法に関するテキストは時々読むようにしている。ある時期、塩野先生の基本書で集中的に勉強したのだが、その後やや遠ざかるにつれて基本的な知識をどんどん忘れていき、さらに行訴法の改正も重なって、さっぱり分からなくなってしまったからだ。本当は同じ書き手のテキストを繰り返し読んだほうが良いのだろうが、この「読書ノート」にも取り上げたいという欲目からいろいろな学者のものに手を出してしまっているのが現状である。

本書もそういう中で手に取った一冊である。冒頭、憲法論から公法原理に入り、行政法に結び付けていくところはなかなか面白い。最初からすでに、著者の行政法に対する位置付け、価値観のようなものが明確に打ち出されている。また、内容が行政組織論→行政作用論→行政訴訟論と進む展開も、ユニークというほどではないが、よくできている。全体的に、コンパクトだが必要な知識が過不足なく網羅されており、重要な判例や学説の分かれるところなどにはそれなりのページを割いて説明するなど、メリハリもある。また、著者自身の意見や主張もほどよく(押し付けがましくならない程度に)呈示されている。要するに、全体的にバランスがよく、分かりやすいテキストとなっている。

なお本書は、行訴法改正の検討会における議論の進行とパラレルで書かれているらしく、検討会における検討事項について、途中経過ながら詳細な解説と検討が加えられている。その後の改正内容まではフォローされていないが、むしろ現在の新行訴法を理解するには、こうした議論のプロセスを知ることが案外有益であるように思われる。そのあたりは地方分権に関するテキストにもいえることであるが、出てしまった結論をただ述べるのと、結論がどう出るか分からない中での検討内容をたどるのでは、同じような記載であっても思考の緊張感が違うのである。