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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【273冊目】福本伸行「賭博黙示録カイジ」

賭博黙示録カイジ(1) (ヤングマガジンコミックス)

賭博黙示録カイジ(1) (ヤングマガジンコミックス)

ギャンブルマンガの金字塔的存在。その後も「人間競馬」「Eカード」「チンチロ」「パチンコ」「17歩」と続いて今に至っているが、個人的にはこの、最初の「限定ジャンケン」編が一番面白く感じた。

主人公のカイジは毎日をだらだらと、それでいて鬱屈して、目標も意欲もない日々を送っている。その前に現れた得体の知れない黒服の男が、カイジが保証人となった男がとんずらして、莫大な借金がカイジの身に降りかかってきたことを告げる。そして、到底返せそうもない借金を一気に返済するための秘策として、豪華客船「エスポワール号」でのギャンブルを提案する・・・・・・。

とまあ、こうしてカイジは得体の知れぬギャンブル地獄に巻き込まれていくのだが、卓抜なのはその「内容」。ポーカーでもパチンコでもなく、エスポワール号で繰り広げられるのはなんと「ジャンケン」なのである。しかも、グー・チョキ・パーの数がカードで制限された「限定ジャンケン」。こういう「仕掛け」を作ることに関しては、福本伸行は天才的だと思う。さらに、一見単純なルールの裏には複雑怪奇なゲームの構造があり、それを知る者と知らぬ者、さらにはそれを懸命に探る者とそうでない者の間には、圧倒的な差が開いてしまう。こういう表のルールと裏のシステムの二重構造は、実際にわれわれが体験するどんなギャンブルにも潜んでおり、さらにはビジネスや経済などの現代社会全般にもこうした要素は存在する。そこをするどくとらえ、しかもジャンケンという、誰もがよく知っており、しかも一見運否天賦のゲームにみえる種目を使って集約的に表現したところに、この漫画の凄味がある。

福本伸行の漫画は、一見すると絵がうまいとはお世辞にもいえず、しかも週刊誌などで読んでいると展開がいまひとつ遅いため、とっつきづらいと思っている人が案外多いような気がする。しかし、ギャンブルを通してこれほどまでに世の中の二重構造性やその非情さ、冷酷さを描いている漫画はそうはない。しかもメチャクチャ面白い。ギャンブルマンガとバカにしてはいけないのである。