自治体職員の読書ノート

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【1079冊目】安井秀行『自治体Webサイトはなぜ使いにくいのか?』

タイトルだけでも「耳に痛い」が、中身もなかなか手厳しい。人口上位30自治体(市区町村)のサイトを「子育て主婦」「シニア」のモニターが実際にチェックした結果をもとに「使いやすいサイト」とはどのようなものかを考える一冊なのだが、見ればみるほどわが役所のサイト(「人口上位30自治体」には入っていないので、本書では取り上げられていない)の使いにくさが目につく。

著者によれば、ユーザインタフェースの面からみた使いやすいサイトには、3つの段階があるという。第1はアクセシビリティ(対象となる情報にアクセスできること)、第2はユーザビリティ(操作が容易であること、情報を理解しやすいこと)、第3はモチベーション(もっと情報を操作したい、もっと使いたいと思うこと)。

これ、サイトを見る立場に立ってみると、とてもよく分かる。まずは必要な情報にアクセスできないと話にならない。アクセスできても、書かれていることが理解でき、次になにをすればよいのか分からないとしょうがない。よくできたサイトだと、さらに楽しみながら必要な情報を入手できる。

著者は実際の自治体サイト分析をもとに、多くの自治体サイトでは議論がアクセシビリティのレベルにとどまってしまっており、ユーザビリティのレベルにまで届いていないのではないかと指摘する。「使いやすさ」という点から見ると、入口の段階で止まってしまっていることになる。

一方、一部の自治体、一部のコンテンツはユーザビリティにも十分な配慮がなされている。では、これを一般化し、どんな自治体(市町村)でも使える共通メニュー、共通プラットフォームにしたらどうなるか。それが本書の提案する「ユニバーサルメニュー」である。実は本書の眼目は、このユニバーサルメニューによる自治体サイトの情報コンテンツの標準化にある。

市町村レベルであれば、利用者が知りたいと思う情報にはほとんど大差ない。そもそも、自治体の業務の枠組み自体が、市町村によってそれほど違わないのだから、当然といえば当然か。そうであれば、共通部分についてはすぐれた自治体サイトをモデルにメニューを標準化してしまえばよい。この「ユニバーサルメニュー」は、そうした発想に基づいている。

なるほど、これは逆転の発想で面白い。実際には、自治体サイトの多くは、担当者がマジメであればあるほど、その自治体の個性を正面に出し、個性化、個別化を図ろうとする。しかし、実際にサイトを訪れる方からすれば逆なのだ。どんな自治体でも同じようなメニューが並んでいたほうが分かりやすいし、自治体間の比較もかえってしやすい。自治体の施策面での個性を出したいのなら、メニュー自体はむしろ無個性で共通のほうが良いのだ。

自治体サイドにとっても、共通メニューはあったほうが良い。すぐれた自治体サイトの成果を「丸儲け」でき、使いやすいサイトが労力ぜロで手に入る。自力で作った場合にありがちな「モレ」も防げる。何より、ユニバーサルメニューという枠組みができることで、利用者サイドに立った発想を「せざるをえなくなる」のが大きい。担当者レベルで作っていると、利用者に分かりやすいようにしようと思っても、いつの間にか「お役所的」なサイトができてしまうことがままある。本書のやり方は、そうした自治体職員の悪癖を、実にシンプルな仕方で「矯正」することができるのだ。

となると、これって実は、「自治体サイト」だけの問題じゃないのである。本書でも指摘されているが、利用者サイドの視点は広報や窓口表示、パンフレットなどありとあらゆるところで必要であり、しかも今はそのどれもが、多かれ少なかれ「お役所的」で「自治体サイド」の視点でつくられている。まずは隗よりはじめよ、ではないが、まずは自治体サイトから始めることで、本書のやり方は自治体業務全般を転換させるトリガーになるように思われる。広報関係者、企画関係者必読。