自治体職員の読書ノート

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【393冊目】樋口晴彦「『まずい!!』学 組織はこうしてウソをつく」

「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく (祥伝社新書)

「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく (祥伝社新書)

「組織行動の『まずい!!』学」の続きらしいが、本書からでも十分。パロマ湯沸器事故や「あるある」の番組捏造、あるいは役所がらみでは、先日もちょっと書いたふじみ野市プール事故、社会保険庁の不正免除問題など、誰でも知っている事故や事件を取り上げて検証している。

本書がすばらしいのは、新書という分量の制約の中にもかかわらず、多くの事故を扱いながら非常に深く掘り下げ、表面的なバッシングではなく、このような事故を生み出す組織の構造的な問題点を的確にあぶりだしているところである。また、問題発生に至る経緯のみならず、その後の対応・対処の巧拙までフォローし、単なる「原因究明」のみならず、適切な「再発防止策」がとられているかどうかまで目を届かせている。

さまざまな事例が取り上げられているため、原因も問題点もひととおりではないのだが、それでも本書を通してみていくといくつかの共通点に気付かされる。まず、どんな事故にも事前に兆候がみられることである。次に、その兆候を見落とし、あるいは気付いても重要視しない組織的な風土があること。言い換えれば危機に鈍感であり、平時において非常時が意識されていないことである。

しかし、これは後付けで指摘することは簡単であって、難しいのは日常業務の中でこうした「わずかな兆候に気付き」「適切に対処する」組織、すなわち危機管理ができる組織をどのようにつくっていくか、ということである。この点、外部の目を入れるという方法もあるが、著者が重視するのはむしろ、その組織を知り尽くした組織内部にこうした体制をビルトインしていくことである。そうした存在を、著者は「やかまし屋」と呼び、職場内に「やかまし屋」がいなくなったことが、相次ぐお粗末な危機管理の一因という。「やかまし屋」というと属人的な資質もあるように思えるが、著者が言わんとしているのは、例に挙げられているトヨタのように、現場にいて問題を発見していくことを重視することであるようである。確かに、問題を見つけようと目を光らせている職員と、問題を避けようと汲々としている職員では、どちらが初期の兆候にすばやく気付き、対処できるか、言うまでもないことであろう。