自治体職員の読書ノート

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【383冊目】紫式部(与謝野晶子訳)「源氏物語」

全訳源氏物語 (中巻) (角川文庫)

全訳源氏物語 (中巻) (角川文庫)

今年は源氏物語千年紀だそうであるが、この「与謝野源氏」を読み始めたのは去年の10月くらい。なんとまあ10ヶ月弱にわたって読み続けてきたことになる。そう考えるといささか感慨深い。毎晩、寝る前に長くて1帖、短い日は2ページくらい、大きなチーズの塊を少しずつ齧るように、惜しみ惜しみ読んでいた。

あまりに間延びしすぎた読み方のせいで、物語の筋がなんだかよく分からなくなってしまった部分もある(特に中間、玉蔓のあたりは読み手のほうの中だるみがひどかった)が、そんなことより、「源氏」ワールドにどっぷり浸れたことが得難い経験であった。度肝を抜かれるほど鮮やかな色彩美に加え、音や匂いまで総動員して語られる平安の宮廷のみやびな世界。時折それと対照的に挿入され、作品にリズムをつくっている自然豊かな地方の描写。美男美女による華麗な恋愛絵巻を綴りつつ、その裏側に恋の哀しみややるせなさ、無常観を織り交ぜる手腕など、現代の恋愛小説顔負けである。しかも、その複雑な情緒を和歌一首で語り尽くしてしまう手際の鮮やかさ。

実は「源氏」を通読できたのは今回が初めて。過去に2回、挫折している。最初は瀬戸内源氏で、これは前半わずか1/4くらいで放り投げた。二度目は無謀にも原文にトライし、やはり同じくらいのところで挫折。今考えると、現代小説ばりにストーリーばかりを追う読み方をしていたように思う。今回は少し読み方を変えた。一気に読むことをやめ、筋書きを追うより世界観に浸るようにした。そうしたらすらりと読めた。何より、毎晩のわずかな時間、源氏の世界に浸れることが楽しみになった。今でもまだ、なんだか名残惜しい。現代語訳の巧拙についてはよく分からないが、与謝野晶子の訳は、なんだか紫式部の言葉が裏側から香ってくるような気がした。