自治体職員の読書ノート

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【359冊目】吉田民雄・杉山知子・横山恵子「新しい公共空間のデザイン」

新しい公共空間のデザイン―NPO・企業・大学・地方政府のパートナーシップの構築

新しい公共空間のデザイン―NPO・企業・大学・地方政府のパートナーシップの構築

本書のベースになっているのは、神奈川県相模原市平塚市伊勢原市秦野市NPOと、前3市の自治体職員を対象に行われたアンケート調査である。同じような項目について両者に問うことで、NPOと自治体職員のお互いへの期待や認識の落差がくっきりと浮かび上がっており、そのことが類書にはない説得力をもたらしている。

本書は、主にNPO地方自治体(本書では「地方政府」と呼ばれている)、企業、大学の4者を中心に、相互の役割分担を考えることで、最終的には複数の社会的アクターによって構成される公共空間のあり方自体を再構築していくものとなっている。珍しいのは大学との連携が重視されていることであろう。また、町内会などの地縁団体とNPOの関係についても比較的しっかりと触れられている。NPOといっても大半は小規模で事実上地域密着型の活動をしており、その意味で、いまも多様な地域社会活動を行っている地縁団体とは密接な関係があるといえる。しかし、NPOを地縁団体の代替的存在と捉える議論はあっても、両者の競合性や相互補完性、パートナーシップのあり方を論じたものは案外少ないように思う。

結局、著者が描き出そうとしている公共空間とは、主体的な市民活動が行政、企業、大学などの社会的アクターと相互補完的・有機的に結びつくことによってもたらされる、活発で豊かなコミュニティであるといえるだろう。そのあたりを本書ではソーシャル・キャピタルなどの概念を引きながら概説しているが、しかし実際には、こうした異なる団体間のコラボレーションがなかなかうまくいかないのは周知のとおりである。本書はその解決策とまではいかないが、少なくともそのヒントを提示するものとなっている。

もし本書のアンケート調査が、神奈川の一定地域だけでなく、たとえば都市と農村、NPOの活動が盛んで成熟している地域とそうでない地域、というように、地域による比較の視点を入れた調査であれば、もっといろいろなヒントが得られたような気がする。