自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【67冊目】奥野信宏「公共の役割は何か」

公共の役割は何か

公共の役割は何か

「安定感のある社会の構築」というテーマのもと、経済学の視点から「公共」の位置づけを論じた本である。

経済学においては、古くから公共の果たす役割は大きかった。ケインズ以来、経済学の論争の主要分野のひとつが「市場における自由経済」と「公共による投資」の関係性を問うものであり、市場経済に対して公共の果たす役割については、すでに一定の評価づけがなされている。本書も主にその視点に立ち、現代日本における公共のあり方について、経済学の立場から論じている。その姿は、多くは公共事業のかたちをとってあらわれる。だから、本書は一種の公共事業論ともなっている。著者は、地方の発展に公共事業が果たしてきた役割をきちんと評価したうえで、社会の成熟とともに生じてきた問題点を的確に指摘する。その姿勢は、世に跋扈する公共事業全否定論的なものと大きく異なるもので、とてもフェアでまっとうなものを感じた。また、都市に社会資本を投入することで都市部の経済が活性化し、次に地方のインフラ整備等にシフトすることでその成果が地方に波及し、全体として国土の発展が図られるなど、経済学者ならではのダイナミックな公共経済論が随所にみられ、とても面白い。

経済学というと「利益優先」「効率優先」の学問のように思われがちだが、それは大きな誤解であることが良く分かる。私は経済学についてはまったくの門外漢だが、本書を読んだかぎりでは、経済学もまた人間社会についての探求の学であり、視点が異なるだけで、その目標とするところが社会福祉の確保と向上にある点では、社会学行政学と変わるところはないようである。まちづくり論についても見るべきところが多く、なかなか勉強になった。