hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2733冊目】綿矢りさ『ひらいて』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン55冊目。


社交的で可愛い少女が、クラスの冴えない男子を好きになるが、彼には恋人がいる。持病があり地味目のその女の子に近づいた主人公の少女は、なんと女の子のほうを誘惑し、身体の関係をもってしまう。


主人公の少女は、なかなかにとんでもない。男の子に勝手に惚れて、机に隠した恋人からの手紙を盗み読み、相手に近づき、なぜかその相手とデキてしまう。なんとも自分勝手だし、むちゃくちゃだ。ふつうに考えたら、共感なんてできなさそうだ。


でも、読んでいると、引き込まれるのである。身勝手な振る舞いに腹が立ちつつ、いつのまにか一緒になって心を波立たせ、焦り、後悔し、怒っている。作者の筆力というしかない。


若くして芥川賞を受賞した女性という点では『推し、燃ゆ。』の宇佐見りんの先輩であるが、宇佐見りんの小説の登場人物が抱えている生来の生きづらさのようなものは、主人公にはあまり感じられない。にもかかわらず、怒涛のような感情の流れが圧倒的な解像度で描かれている点で、ふたりはどこかよく似ている。その感性を遡れば、おそらく太宰治あたりに行き着くのではないだろうか。


とにかく、ものすごい迫力に圧倒されっぱなしの一冊だった。近々映画化されるようですが、この熱量を映像化するのは、生半可な演技では務まりますまい。楽しみのような、怖いような。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!