hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2712冊目】山田詠美『ぼくは勉強ができない』



新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン34冊目。


主人公の時田秀美は、17歳の高校生。勉強はできないが、女性にはよくモテる。そして、そっちのほうがずっと大事なことだとわかっている。


自分が高校生の頃を思い出しながら読んでいた。大人の目からは、かれらは何にもわかっていないように見える。でも、実はかれらは、いろいろ分かっている。むしろあまりにもまっすぐに、あまりにも深くわかりすぎてしまい、自分の身の丈とのあまりのギャップに、悶え苦しむものなのだ。


本書は、そんな高校生の心情を、圧倒的な解像度の高さで描く。ちょっとした会話のディテール、ほんのわずかな仕草から、匂い立つようにあの頃の思いが蘇る。もちろん、私と時田秀美くんは全然ちがう性格だけど、それでもやはりそうなのだ。


だから本書は、著者自身が「あとがき」で書いているように、大人になってから読むとよい。著者はこんなふうにも書いているのである。


「時代のまっただなかにいる者に、その時代を読み取ることは難しい。叙情は常に遅れて来た客観視の中に存在するし、自分の内なる倫理は過去の積木の隙間に潜むものではないだろうか」(p.242)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!