【2696冊目】サン=テグジュペリ『星の王子さま』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン第1投にして、18冊目。まずはこのあたりから始めましょうか。
超有名な一冊ですね。私も何度も読んできましたが、『夜間飛行』や『人間の大地』に出会ってからは、なんとなく食指が動きませんでした。いや、良い本ではあるんですが、なんでみんな『星の王子さま』ばっかりもてはやすんだろう、と思ってしまったんですよね。本当にこの本が良いと思うなら、サン=テグジュペリの他の本も、もっと読まれて良さそうなのに。
そういうわけで久しぶりの再会でしたが、いろいろ発見がありました。とりわけ、王子さまがいろんな「大人たちの星」をめぐる中で、点灯人だけは「友だちになれそう」と感じたことが気になりました。なぜなら彼だけは「自分自身以外のことをいっしょうけんめいやっているから」。それが、指示されるがままにガス灯をつけたり、消したりするだけの仕事であっても。
あと、語り手の「僕」のことも気になります。砂漠に墜落した飛行士、ということは明らかに著者自身の分身である「僕」もまた「ゾウをまるのみにしたボア」を描いているのに、みんながそれをわかってくれません。でも、王子さまだけは違っていました。ふたりは「見えないものこそ本質であり、真実である」ことを知っているのですね。それはまた、著者自身が大人になる中で、見失わないように注意深く守ってきたものなのでしょう。それを具現化したのが、あの王子様なのでしょうね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!