【2681冊目】木下是雄『理科系の作文技術』
タイトルも変えて、心機一転再開します。前から見守ってくれている方々からは「またかよ」と言われそうですが、こうして戻ってこられる場があるからこそ、いろいろトライできるわけですので、そのへんご理解をば。
さて、久しぶりに取り上げるのは名著中の名著。「理科系」というタイトルだが、内容はそこにとどまりません。仕事で使う文書の書き方の基本は、ほとんどすべてこの一冊に述べられているといって良いでしょう。世の中に山ほど出回っている「ビジネス文書の書き方」のたぐいの本のネタ本のひとつでもあります。
最初に読んだときの印象は強烈でした。たしか大学に入ったばかりのころでしたが、それまで学校で教わってきた「作文技術」とはなんだったのだろう、と思いましたね。「事実と意見を分ける」とか「理解されるように、誤解されないように書く」といった指摘は、少なくとも義務教育の「国語」の授業では聞いたことさえなかったのですから(今はさすがに違うと思いますが)。
あと、初読時はほぼ読み飛ばしていましたが、いま読むと意外に参考になるのが、最終章「学会講演の要領」です。スライドの活用の仕方(当時はパワポなんてものはなかった)、発表の組み立てから原稿やメモの準備の仕方、果てはマイクの使い方から発声法まで、ここに書かれていることは、ほとんどそのままプレゼンテーションや説明会といった大人数の前で話す際に役に立ちそうです。
ちなみに、本書のエッセンスは、203ページ以降に項目仕立てでまとめられています(こういうところも「理科系」らしい親切さですね)。ここでは、さらに端的に要約した上で、ここにご紹介したいと思います。みていただければ、ビジネス文書の作成にも役立つ、と私が申し上げた意味がおわかりいただけるのではないでしょうか。
1 そのパラグラフのトピックを常に念頭に置く。
2 頭から順に読めば理解できるように書く。
3 飛躍のない記述をする。「論理の鎖の環」を省略しない。
4 できるだけはっきり言い切る。
5 事実と意見を区別する。事実に意見を混入させない。
6 一つの文はできるだけ短く。
7 一つの文に主語はひとつ。
8 理解できるように、誤解できないように書く。
9 なくてもすむことばは、一つも書かない。
10 できるだけ「受け身」ではなく「能動態」で書く。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!