【2606冊目】寺地はるな『ビオレタ』
最近よく名前を見るので気になっていた作家。この本はたまたま見かけて手に取ったけど、後から調べたらデビュー作とのこと。ポプラ社小説新人賞を受賞したらしい。
だからというわけじゃないが、とっても良かった。適度に辛口で、適度にドライで、でもとてもみずみずしくて温かい。
文章がとてもいい。空気感があって、人を包み込む。会話がいい。リズミカルで、その人の声まで聞こえてきそうな言葉遣い。
普段は無愛想で厳しいけど美味しいものを食べると顔をくしゃくしゃにする菫さんがいい。とらえどころのない、でも底無しに温かくてやさしい千歳さんも、若くて口が悪くて、でもときどきものすごく本質を突いたことをいう蓮太郎くんも、とてもいい。
そんな中で、主人公の田中妙が、子供っぽくてひとりよがりだったのが、すこしずつ変わっていくのがいい。でもそんなに劇的に変わるわけじゃなくて、やっぱりいろいろうまくいかなかったり空回りしてしまうのも、いい。
まあ要するに、とってもよかった。気に入った。他の作品も読んでみたい。