自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2497冊目】沢木耕太郎『テロルの決算』

 

新装版 テロルの決算 (文春文庫)

新装版 テロルの決算 (文春文庫)

 

 

 

昭和35年10月12日、社会党委員長浅沼稲次郎が、日比谷公会堂演壇上で刺殺された。加害者は当時17歳の山口二矢。本書はこの衝撃的な事件に至る流れを、浅沼、山口の両面から追った一冊だ。

とはいえ、そもそも現代ではこの事件のことさえ知らない人も多いのではないか。だいたい「二矢」を「おとや」と読める人も少ないだろう。だが、ネトウヨという右翼とは名ばかりのくだらない連中が幅を利かせ、社会全体が大きく右傾化しつつつあり、そして言論や行動の短絡化が著しい今こそ、あの事件は思い出されるべきだし、本書は読まれるべきと思う。

61歳の浅沼と17歳の山口を比較するのはアンフェアかもしれないが、それにしても、浅沼の人間としての奥行きや複雑さに比べると、どうしても山口は、行動も思想も人間も、いかにも薄っぺらで単純だ。その単純さは、右と左の違いはあれど、学生運動に身を投じた当時の学生とあまり変わらない。その意味でこの事件は、右翼と左翼の対立構造というよりも、大人と青年の対立構造であり、幕末の志士たちの行動や、あるいは戦前のたとえば二二六事件あたりとも対比できるのかもしれない。