自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【本以外】映画『パラサイト 半地下の家族』を観てきました

 

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韓国初のパルムドールを獲った話題作。一部ネタバレがありますので、未見の方はご注意を。

 

貧困や格差を正面から扱った作品としては、日本なら『万引き家族』、米国なら『JOKER』があるが、これもその系譜に連なる一作。家族がもうひとつのテーマになっている点では『万引き家族』と似ているし、貧しき者、虐げられた者の反乱という点では『JOKER』に似ている(そのルーツを辿れば『タクシードライバー』にまで至るのだが)。だがそれは、あくまで「似ている」だけであって、そのどちらとも違うきわめて独創的な作品になっている。なんといっても、「笑い」と「サスペンス」が混然一体となっているのがすばらしい。

 

もっとも、貧しき者の反乱と言っても、この映画では主に「貧しいもの同士」がいがみ合い、争っているのであり、その点がなんとも悲しく、やりきれない(スマホを奪い合うシーンなど、笑えるだけにかえって切ないものがあった)。特に「地下の住人」は、金持ちのパク社長に対しては最後まで「リスペクト」なのである。一方の主人公家族の父親は最後に暴発するのだが、そのきっかけはなんと「臭い」なのだ。

 

考えてみれば、臭いというのは残酷だ。目に見えず、自分では気づかなくても、周囲は気づいてしまう。本能や感覚に直接訴えるため、無視することが難しい。実際、倒れた男に駆け寄ったパク社長は、おそらくまったく意識することなく、その男の臭いを嗅いで、嫌そうに顔をそむけてしまうのだ。その瞬間を見た時に父親が浮べた、怒りと絶望の表情がものすごい。それは、そこまでの「臭い」の伏線でずっと無表情を貫いてきた父親の、底なしの怒りと絶望だったのではないか。

 

道路から階段を下りたところにある「半地下の家」と、道路から階段を上る「金持ちの屋敷」。大雨のため汚水があふれ、住めなくなった「半地下の家」の住人は避難所に逃げ、一方の(おそらく高台にある)「金持ちの家」では、大雨の翌日も何事もなかったようにホームパーティを開く。繰り返し、徹底して描かれる「上」と「下」の絶望的な格差。主人公家族は、そんな金持ち家族の脇の甘さにつけこみ、巧妙に家の中に入りこむが、結局それ以上のことはできない。少年ギウがダヘの前でつぶやくように、結局彼らは、入りこむことはできても、パク一家になることはできないのだ。

 

そんな重く暗いテーマを扱いながら、笑いと予測不能の展開で観客をくぎ付けにする監督の手腕は見事。ちなみに一番笑ったのは、元家政婦の「朝鮮中央テレビのモノマネ」。やっぱり韓国でも、あれって「そういう扱い」なんですね。