自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2466冊目】工藤美代子『悪名の棺 笹川良一伝』

 

悪名の棺 笹川良一伝 (幻冬舎文庫)

悪名の棺 笹川良一伝 (幻冬舎文庫)

 

 

 

福祉の仕事をやっていると「日本財団」という名前をよく見るが、そのたびにこの人の社会への貢献の大きさを思わされる。だがその業績は、果たして見合うだけの評価を受けてきただろうか。

日本に限ったことじゃないのかもしれないが、「破格の人物」を遇するのが、われわれは本当にうまくない。この手の人は決して清廉潔白ではなく、たいていは「清濁併せ呑む」タイプが多いので、おおかたはバッシングの対象となる。

先物取引で莫大な財をなし、戦中は「大衆右翼」を自称して団体を組織、戦後はA級戦犯として巣鴨プリズンへ。戦後は競艇事業を立ち上げ、後の日本財団の礎をつくった。東京と大阪に妻をもち、子どもは厳しく接する以外ほとんど放置状態。自宅は雨漏り、風呂の湯は半分。一方、巣鴨プリズンに散った「戦争犯罪人」やその家族のため、その後はハンセン病制圧運動のためには、惜しげなく私財を投じた。

善悪で割り切れない圧倒的な大きさは、測る者自体が測られるほど。96年という長い人生は、長生きを割り引いたとしても、並の人間10人分くらいには相当するだろうか。笹川良一。戦後という小さな器には到底収まらない、毀誉褒貶の人。