自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2441冊目】筒井康隆『旅のラゴス』

 

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 

 

 

単行本初版が昭和61年というから、筒井康隆がもっとも破壊力のある作品を書いていたころの作。にもかかわらず、この小説は驚くほど「まっとう」だ。

集団転移と呼ばれる瞬間移動ができ、人の心を読むことのできる人がいる世界で旅をするラゴス。奴隷になり、王様になり、学者になり、波乱万丈の旅路と人生のドラマはとにかく奇想天外、予測不能で、読む者を飽きさせない。後半はそこに文明社会への批評性が加わり、高度な知識や技術を突然授けられることで生じる社会の歪みが描かれる。

暴力もエロもグロもドタバタもない、非常に健全かつすぐれたSF大河小説。まったく筒井康隆らしくないところに、かえって筒井康隆という作家の底知れなさを感じた。