自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2432冊目】武田徹『「隔離」という病い』

 

「隔離」という病い―近代日本の医療空間 (中公文庫)

「隔離」という病い―近代日本の医療空間 (中公文庫)

 

 

 

病気だから隔離する、と人はいう。だが過剰な隔離は、それ自体がひとつの、社会の病理である。隔離を否定するわけではない。堺市でのO-157騒動は、適切な隔離の必要性を再認識させた。だが、日本におけるハンセン病患者の隔離は、どう見ても過剰なものだった。

本書はだからといって、隔離政策の主導者を単に断罪することはしない。たしかに光田健輔のような影響力のある人物が、必要以上に感染の恐怖をあおり隔離の必要性を説いたことで、日本のハンセン病対策は、諸外国の施策と逆行するかのように隔離一本槍で突き進んだ。だがそれは、決して悪意でなされたわけではない。むしろ光田は、患者にとっては慈愛に満ちた父のような存在であり、尊敬を集めていた。ある種のユートピアを目指す善意こそが、過酷で異常な隔離を生む。だからこそ隔離の問題は、根深く厄介なのである。

一方で著者は、ハンセン病療養所に都市共同体のひとつの理想形を見出す。それは血縁にも地縁にも縛られず、「生の多様性」を緩やかにつなぎ合わせ、共存させているというのだ。唯一無二のユートピアではなく、多様性を認め合うゆるやかな共同体を志向すること。それが「隔離という病い」からわれわれを解き放つための、数少ない道筋なのかもしれない。