【2423冊目】廣末登『ヤクザになる理由』
実は本書で一番面白かったのは、著者自身の半生を綴った終章「ある更生の物語」だった。以前グレていた犯罪社会学者、くらいに思っていたらとんでもない、議員秘書をやったりテキヤをやったりと、とにかくやたらに波乱万丈なのだ。
その割に本書自体はおとなしい。ヤクザや元ヤクザのインタビューを取り上げつつも、既存の社会学の知見を丁寧に紹介し、突き合わせており、思ったよりガチな学問的アプローチになっている。特に意外な内容があるわけではないが、暴力団の加入や更生をめぐる事情を地道に検証している。インタビューも続けて読めば面白いのだろうが、「家庭環境」「学校」などの場面ごとに輪切りにされていて、どこか研究標本じみている。
排除一辺倒の暴力団対策がかえって無秩序なアウトローを生み出すとの指摘はまさにそのとおり。なのに具体的な就職や生活の場の支援は、一部のNPOや自治体などに任されているだけだ。国レベルでの実態の検証と新たな施策を、そろそろ本気でやらなければならないのではないか。