自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2362冊目】マーガレット・アトウッド『オリクスとクレイク』

 

オリクスとクレイク

オリクスとクレイク

 

 

崩壊後の世界と思われる光景。唯一の生き残りらしき「スノーマン」をとりまく、奇妙で人工的な子どもたち。なぜ世界が崩壊したのか、そこにいる(あるいは、ある)奇妙な存在は一体何なのか。謎は少しずつ、ほんのわずかずつ明かされるので、うかうかしていると読み過ごしてしまいそうだ。

カギを握るのは、スノーマンの子ども時代を描くもう一つのパート。そのころは「ジミー」と呼ばれていた男の子は、クレイクという天才的な男と出会う。そして、児童売春をさせられているとおぼしき女の子、オリクス。だが、ジミーたちの世界もまたある種のディストピアだ。ジミーらが住む「オーガン・インク・ファームズ」はどうやらゲーテッド・コミュニティのようなところらしい。その外側に広がる「都市」は「ヘーミン地」と呼ばれ(平民地?)、「公共の安全に穴がある」とされる。ヘーミン地からオーガン・インク・ファームズへの侵入を防ぐための警備兵が「コープセコー」だ。

成績優秀な科学者となったクレイクのたくらみとは何なのか。ジミーの世界はなぜ崩壊し、ジミーはスノーマンとなって崩壊後の世界をさまようことになったのか。起こったことは徐々に示唆されるだけで、全貌はラスト近くになるまで明らかにされない。しかし、ジミーの住む殺伐とした近未来よりは、何もかもなくなったスノーマンの世界のほうが、どこか救われているような気がするのはなぜだろうか。