自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2355冊目】北島行徳『無敵のハンディキャップ』

 

 
インスタグラムからの転載。


この本は「障害者プロレス」の本である、、、と言われて、手に取ってみようと思う方はどれくらいいるのだろうか。清く正しい「障害者福祉」をやりたい人にとっては、障害者同士、障害者と健常者がガチで戦うなんてとんでもないことだろうし、「障害者に興味のない」人にとっては、そもそも関心の外であるに違いない。

だが、この本は相当に面白い。なんといっても、登場する人々がめっぽう魅力的なのだ。酒乱だったり、女装が趣味だったり、といった「障害者らしくない」ところだけではない。「健常者」側も含めて、みんな自己主張が強く、わがままで自分勝手。容赦なくエゴがぶつかり合う、そんな連中だからこそ、こんな破格の活動ができたのかもしれない。

そして、この本はたぶん、多くの人が一度も考えたことのないことをたくさん考えさせてくれる。だいたい障害者にプロレスをやらせて「見世物」にするとは何事か。しかも障害者同士だけではなく、さっき書いたように、健常者である団体のスタッフと障害者レスラーがガチンコで戦うのである。ケガをさせたら責任は取れるのか。「普通」なら出てくるそういう意見を、本書は軽々と吹き飛ばし、はるか彼方に読者を連れて行ってくれる。

さらに言えば、本書には障害者同士の結婚や出産、障害者と健常者の恋愛や結婚も描かれる。そこにあるのは安易なヒューマニズムや「ボランティア精神」とは真逆の、本気の人間関係だ。著者はこのように書いている。

「障害者の気持ちになって、と健常者が言ったところで、本当のところはわかるわけがない。わかるというのは健常者の傲慢だ。周囲に保護されて生きていながら、健常者は理解してくれないと嘆く障害者がいる。それは甘えだ。障害者と健常者はもちろん、障害者同士でも感情的なもつれは常につきまとう。しかし、人と人との間には、いろいろとあって当然なのだ。むしろ問題なのは、ぶつかり合うことを放棄して生きることではないか」(p.346)

 

だからこの人たちは、本気でぶつかり合う。精神的にも、肉体的にも。障害者プロレスとは、そのもっとも極端で、もっとも真摯な形の実践なのである。