【2344冊目】中島梓『アマゾネスのように』
インスタグラムからの転載。
タイトルだけでは何の本かわかりにくいけど、これは著者「最初の」闘病記。乳ガンの発見、入院、そして手術。そのプロセスと心情をきめ細かく、そしてダイナミックに綴った一冊だ。
「最初の」闘病記、というには訳がある。実は本書を書いた1990年から17年後の2007年に今度は膵臓ガンとなり、やはり闘病記『ガン病棟のピーターラビット』を書いているのだ。しかも、その後の2009年には56歳で死去。さらに驚くべきことながら、未完の闘病記『転移』が死後に刊行されているのである。
なんともすさまじい作家根性というべきか。だが、この人こそ、実は天性の作家であった。生涯で送り出した本は400冊以上。中でも未完に終わった『グイン・サーガ』は、日本のファンタジー小説の金字塔であった。
「いつも私はこの小説、この芝居が自分のさいごの小説、さいごの芝居かもしれないと思って生きてきた。いつ核戦争になるかわからないし、いつ交通事故で知らないうちに死んでいるかわからない世の中だ。これがさいごかもしれないーーそう思うからずっと手抜きはしなかった。そのまま気がついたら二百冊の本を書き、十本の脚本を書いてここまできていた。これがあと十年続こうが、百年だろうが、一年だろうが私の姿勢は変りはしないだろう。もう私はずっとこうやってゆくしかないだろう」(p.88)
あらためてすごい人、すごい作家だったのだなあ、と思う。どんなに巧い作家でも、書くことに惓んだ人の本は読むに耐えない。栗本薫・中島梓の本でそんな思いをしたことは、私は一度もなかったのだ。