自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2340冊目】増田四郎『ヨーロッパとは何か』

 

ヨーロッパとは何か (岩波新書 青版 D-14)

ヨーロッパとは何か (岩波新書 青版 D-14)

 

 


明治維新で日本はヨーロッパの文物を輸入し、習慣を取り入れ、文化を学んだ。だがそれは、そもそもヨーロッパが何なのかよくわからずに、表面だけをなぞっているにすぎないのではないか。

そんな問題意識をもとに、明治維新百年の節目に書かれたのがこの一冊だ(つまり1967年の刊行)。したがって学問的知見としては古い部分もあるのかもしれないが、少なくとも大枠の捉え方は、おそらく今でも通用するのではないかと思う。

ヨーロッパの起源といえば多くの人がギリシャ・ローマを思い浮かべるのではないか。暗黒の中世を経て、ルネサンスギリシャ・ローマが復権したところから歴史を論じる人も多い。だが、著者が注目するのは、そこですっとばされてしまった中世だ。特に、当時の村落の形態や修道院の存在が重視されているのがユニークだ。

ゲルマン民族の存在も重要だ。特にフランク王国の出現が決定的であった。思えばヨーロッパの「統一」がなされたのは、このフランク王国がほとんど最初で最後だったのだ。ドイツやフランス、イタリアなどの個々の国家意識は、この「ヨーロッパ」感覚が下敷きになっている。このあたりはアジアにはない独特の感覚であり、そうであればこそ、EUなどという超国家的システムが実現したのではないか。

なおやや傍論ではあるが、著者が提唱する「辺境変革論」は重要だ。

「歴史的にみた社会の発展過程は、同一社会においてでなく、少しずつずれたかたちで、周辺地区ないし辺境地区に、新しい原動力が定礎され、そこが基点となって、旧体制を動揺させ、変化させるというケースが圧倒的に多い」(p.190)

したがって、国が本気で「地方分権」「地方創生」に取り組もうと思うなら、まずは国内の「辺境」に着目することだ。そして、そこで生まれつつある変化の兆しに目を凝らし、その邪魔をしないようにすることである。国が補助金をつけたばっかりに、地方の独創的な施策が骨抜きになり、潰れたケースは数多い。ま、これは余談。