【本以外】私家版「平成の30冊(+番外編10冊)」をセレクトしてみました
朝日新聞で「平成の30冊」が選ばれていたが、どうにも気に入らないので、自分なりに選びなおしてみた。基準は「今でも読める」「本として一定水準に達している」「それでいて時代を反映している」こと。あと全集、アンソロジー系は除外。本当は『ちくま文学の森』とか『池澤夏樹個人編集 世界文学全集』とか入れたいけど。あと海外作品は(一冊を除き)海外での刊行年でカウント。順番はランキングではなく刊行順。では、スタート!
1:ワンダフル・ライフ(1989年/平成元年)
ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・ジェイグールド,Stephen Jay Gould,渡辺政隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/03/01
- メディア: 文庫
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生物進化をめぐる議論を塗り替えた一冊。とにかく面白い。
2:ナニワ金融道 (1990年/平成2年~1996年/平成8年)
ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)
- 作者: 青木雄二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/01
- メディア: 文庫
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ゼニカネの話をここまでリアルに描いた漫画はなかった。「ウシジマくん」のルーツ。
3:ゾウの時間 ネズミの時間 (1992年/平成4年)
日本が生んだ生物学の名著だと思う。今読んでも十分通用する。
4:字通(1996年/平成8年)
歴史に残る偉業「字書三部作」のラスト。単著ですよ、単著。
5:アンダーグラウンド (1997年/平成9年)
平成を語るなら、オウムを忘れてはいけません。
6:わたしの名は紅(1998年/平成10年)
- 作者: オルハンパムク,Orhan Pamuk,和久井路子
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2004/11/01
- メディア: 単行本
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トルコの小説の面白さは、イスラムとヨーロッパが交錯しているところ。今こそ読まれるべき。
7:赤目四十八瀧心中未遂(1998年/平成10年)
案外、日本の文学史に残るんじゃないかと思う。私小説をよみがえらせた一冊。
8:バガボンド (1998年/平成10年~)
たぶん日本で一番、連載再開が待たれているマンガ。私は『リアル』の続きのほうが気になるが。
9:過ぎし世の面影 (1998年/平成10年)
開国以前の日本の見方を一変させた名著。
10:日本語練習帳 (1999年/平成11年)
もっと古い本かと思っていた。日本語を使う人すべての必携本。
11:エレガントな宇宙(1999年/平成11年)
- 作者: ブライアングリーン,Brian Greene,林一,林大
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2001/12/01
- メディア: 単行本
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宇宙論の最前線(といってももうだいぶ前だが)、超ひも理論の世界にようこそ。
12:銃・病原菌・鉄 (2000年/平成12年)
これは朝日新聞の30冊にも入っていたかな。素晴らしい本です。
13:フェルマーの最終定理(2000年/平成12年)
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 文庫
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フェルマーの最終定理が解かれたのは平成ですからね。
14:動物化するポストモダン (2001年/平成13年)
動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11/20
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東浩紀を入れるなら『観光客の哲学』よりこっちかな、と。
15: カイエ・ソバージュ (2002年/平成14年~2004年/平成16年)
人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/01/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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中沢人類学の到達点。面白いですよ。
16:夕凪の街、桜の国 (2004年/平成16年)
『この世界の片隅に』と迷ったが。本当はどっちも入れたい。
17:わたしを離さないで (2005年/平成17年)
小説がここまで人の心を揺さぶれる、という極点。朝日のリストにもあった。
18:カラマーゾフの兄弟 光文社古典新訳文庫版(2006年/平成18年)
これも朝日のリストと重複。唯一今回のリストで、オリジナルの刊行は平成以前(当たり前だ)。あえて入れたのは、やはり古典新訳の流れを作った一冊だから。
19:ザ・ロード (2006年/平成18年)
- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/30
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21世紀を代表する小説のひとつになると思う。絶品。
20: 資本主義はなぜ自壊したのか(2008年/平成20年)
リーマンショックも平成。これは中にいた人の懺悔の書。
21:ハーモニー(2008年/平成20年)
『虐殺器官』と迷ったが、日本発のディストピア小説の名作として、こちらを。
22:プラハの墓地(2010年/平成22年)
ホントは『薔薇の名前』を入れたかったんだが。とにかくウンベルト・エーコは必須。
23:親鸞 (2010年/平成22年~2014年/平成26年)
五木寛之らしい親鸞像。悪人正機の考え方は、今こそ見直されるべき。
24:遺体 (2012年/平成24年)
朝日新聞のリストで一番許せなかったのは、東日本大震災に関する本が一冊もなかったこと。とはいえ一冊ピンポイントで取り上げるのは難しいが、手に取りやすく突き刺さりやすいのはこの本か。
25:東京プリズン (2012年/平成24年)
平成が生んだ本格的戦争文学、国家文学、占領文学。
26:なぜ世界は存在しないのか (2013年/平成25年)
捉えづらい現代思想であえて一冊選ぶなら、これか。新実在論の旗手による代表作。
イスラムとヨーロッパの相克をギリギリの臨界点で描いた一冊。
韓国でベストセラーになり、日本でも評判の一冊。韓国文学は最近とても気になる。
29:おらおらでひとりいぐも (2017年/平成29年)
高齢社会ならではの文学が、突如出現した。老人文学というジャンルが生まれようとしているのかもしれない。
30:知の果てへの旅 (2017年/平成29年)
「既知」と「不知」の境界線を旅する一冊。平成の次の時代の科学研究は、この本を道標にして始まるのだ。
≪番外編≫
あえてお薦めはしないが、懐かしいもの、時代に影響を与えたものはコチラに。10冊くらいでいいかな。
1:ソフィーの世界(1991年/平成3年)
新装版 ソフィーの世界 (上) 哲学者からの不思議な手紙 ( )
- 作者: ヨースタイン・ゴルデル,須田朗,池田香代子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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哲学を分かりやすく解説する本のルーツはここか。 内容的にはややビミョー。
2:リング(1991年/平成3年)
日本のホラー小説ブームの先駆け。今読んでもよくできている。
3:ゴーマニズム宣言(1992年/平成4年~)
ここまで国民に広く影響を与えたマンガはなかった。一方今のネトウヨの培養地にもなっていたのだが。
4:完全自殺マニュアル(1993年/平成5年)
自殺大国・日本で生まれた問題作。こういう本が出版できるこの社会ってどうなのか。
5:大往生(1994年/平成6年)
今も続く「長生き本」のルーツ。みんな大往生を望んでいるらしい。
脳本ブームの火付け役。見たらやっぱりサンマーク出版。
- 作者: J.K.ローリング,J.K.Rowling,松岡佑子
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 1999/12/01
- メディア: ハードカバー
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私はあまり好きじゃなかったけど、あまり本を読まない子どもにまで読者層を広げた功績は大きい。
最近の『日本国紀』にまで続くフェイク歴史本のルーツ。インテリコンプレックスのある人を囲い込み、「反自虐史観」的なインチキ歴史観で洗脳するネトウヨ増産装置。
読んだ人の誰もが、自分だけは例外だと思っていたという奇妙な本。
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: 文庫
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ひところやたらとブームになった「サンデル本」。でも内容は意外にガチな哲学の解説だったりする。