自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【本以外】ムンク展に行ってきた

急に休みが取れたので、雨の中を上野まで行ってきた。目的は、ムンク展。

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平日で悪天候、開催から間もない時期という好条件ながら、けっこう人が入っていてびっくり。だがその割にどの絵も見やすかったように感じたのは、東京都美術館のオペレーションやレイアウトがよくできていたこともあるように思う。混みあうのが分かっている「叫び」の前は、動きながら鑑賞する列を前に置き、その後ろをパーティションで区切って「止まってじっくり見たい人」のためのエリアにしていた。比べては何だが、『「怖い絵」展』『フェルメール展』がいずれもカオス状態だった上野の森美術館とは大違いだ。そういえば東京都美術館で以前やっていた『若冲展』も、ひどく混んではいたが、その割にどの絵もちゃんと鑑賞できるよう工夫されていた。いったいどこが違うのか。

それはともかく、さて、ムンクである。100点以上という破格の規模だが、ほとんどの作品がものすごいエネルギーを放射しているように感じた。パワー、というのともちょっと違う、どちらかというと「怨念」のようなエネルギーだ。だいたい、しょっぱなの『地獄の自画像』がものすごい。背後に迫る影が、自分を呑み込みそうになって迫ってくる。

『叫び』以外に印象に残ったものをいくつか挙げると『メランコリー』『幻影』『赤と白』『浜辺にいる二人の女』『絶望』『不安』『赤い蔦』『マドンナ』『目の中の目』『クピドとプシュケ』『灰』『太陽』『星月夜』『狂った視覚』等々、他にもいっぱいある。『マドンナ』はエロチックとかなんとか言われているが、私にとってはやっぱり目が怖すぎる。『目の中の目』も不気味な印象で忘れがたい。『叫び』と同じ部屋にあった『絶望』『不安』『赤い蔦』は(『叫び』もあわせて)トラウマ級の傑作。『赤い蔦』は、ポオの怪奇小説キューブリック映画の『シャイニング』の怖さを思い出した。

そんな中で、やはりインパクトがひとつ飛び抜けているのが『叫び』だ。あの迫力は忘れがたい。見ているうちに、ねっとりとした不安と恐怖が心の奥底をざわつかせる。うねりながら見るものを巻き込む圧倒的な感情。これはまさに、異形の傑作だ。

写実でもなければ、抽象でもない。理性も感情も通り抜けて、無意識の不安と恐怖を直撃する。こんな画家は他にいない(ルドンやゴヤも怖いが、またちょっと違う)。そんな中で後期の作品が明るく健康的なのが、どこか救われた気分になる。特に『太陽』の圧倒的なまぶしさときたら! これはおそらく、最も暗い夜を抜けてきた者だけが描くことができる、絶対的な昼の絵画なのである。