自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2250冊目】松本理寿輝『まちの保育園を知っていますか』

 

まちの保育園を知っていますか

まちの保育園を知っていますか

 

 

読んですぐ、似ているな、と思ったのが、フローレンスの駒崎さん。「こども」を相手にしているのも共通しているが、子育て経験がない時期から「こども」について考えはじめたところも一緒。むしろ、自分の体験という先入観がないからこそ、思い切った事業を立ち上げることができたというべきか。

本書の著者が立ち上げたのは、保育園。それも、まちの拠点となり、こどもを中心にまちがつながるような「まちの保育園」である。とはいえそれは、こどもをまちづくりの「ダシ」に使うようなものではない。むしろ、著者は徹底した「こども中心主義」で保育園を構想している。

このあたりは、いわゆる待機児童問題から入っていく保育園論とは大きく違うところだろう。待機児童という視点は、どうしても「働く親」のための保育園、という考え方につながりやすい。もちろんこどもを産んでも働き続けられる社会は大事なのだが、ちょっと油断すると「量を満たす」ことが優先されやすいのが、この種の論法の怖いところだ。こどもを預かる施設が「量優先」であってよいはずがない。質と量は不可分一体、車の両輪であるはずだ。

著者のいう「こどもを中心としたまちづくり」とは、こども自身が生き生きと過ごすことができる場所があることが前提である。こども自身が道具立てになってしまっては、こどもの魅力も減殺され、結果としてまちの中心にはなりえない。

「子どもたちから、私たちが受けるものは想像以上に多い。特に、「子どもが子どもをしていることの豊かさ」には、いつも新鮮な感動があります。子どもが一つ一つ、ものごとや人との出会いを持つ時に流れる時間に、大人が関わる時、たくさんの発見があります」(p.145-146)

この感覚、この感性なのだ。管理教育とは正反対の、子どもの力を引き出す「保育」の力が、この本からは感じられる。子どものもつ力こそが、まちを変えていく。おそらくそれこそが、「まちの保育園」の目指すところなのである。