【2017冊目】ボフミル・フラバル『厳重に監視された列車』

- 作者: ボフミル・フラバル,飯島周
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2012/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ナチス占領下のチェコを舞台に描かれる、駅の操車係の青年の愛、戦争、そして死の物語。すごく重いテーマを扱っていながら、軽妙な会話とユーモラスなシーンの連続で一気に読ませる。
この人の小説は初めて読んだが、すごくいい。チェコの作家としてはミラン・クンデラの15歳年上だが、クンデラがフランスに出国して作品を発表したのに対して、フラバルは共産主義下のチェコ国内に残り、出版制限や執筆禁止処分を受けながら小説を書き続けた。だからというのではないが、クンデラの作品の洗練に比べると、この人の小説はどこかしぶとく、切実なものを感じる。思い出したのは、現代中国の作家、莫言。莫言もまた、中国国内で「しぶとく」ユーモラスで切実な作品を発表し続けている。
本書の主人公ミロシュは、冒頭にも書いたとおり、駅のしがない操車係である。かつて自殺未遂をしたこともあるミロシュは、マーシャに告白するもののセックスはうまくいかず、落ち込みの果てにナチス・ドイツの弾薬を運ぶ列車の爆破を計画する。ドイツ人と相撃ちになり、二人並んで死を待つラストシーンは忘れがたい。
クンデラのほうが作家としての評価は上かもしれないが、私自身は、どちらかというとフラバルの泥臭いユーモアと切実に惹かれるものがあった。ほかの作品も読んでみたい。