【1533冊目】秋田将人『残業ゼロで結果を出す公務員の仕事のルール』
- 作者: 秋田将人
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 2013/02/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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国家公務員の激務ぶりや地方公務員の過労自殺がニュースで取り上げられるようになり、最近はさすがに「公務員は定時で帰れるラクな仕事」だと思っている人も少なくなったように思う。
だが一方で、仕事のやり方を知らないためしなくてもいい残業をしている人は、私が見ている範囲だけでもけっこう多い。もちろん残業には人員体制や制度上の問題など、個人レベルではどうしようもないことも多いのだが、それでも一人ひとりの段階でできることはちゃんとやりましょう、というのが本書の内容だ。
「ゴールから逆算」「TODOリスト」「仕事の分量の見極め」など、どんな仕事にも当てはまりそうなものから、役所独特の根回しの仕方や処世術まで、書かれている内容は幅広い。ヒラの職員から管理職まで、対象となっている職層も広く、なかなか目配りが行き届いている。
前者については通常のビジネス書やハック系の本と共通する部分も多く、民間でも公務員でも仕事のやり方には相通じる点が多いことが分かる(言い換えれば、公務員も民間向けのビジネス書を読めばそれなりに得るモノがあるということである)。民間だから、公務員だからと違いばかり強調するより、お互いにどんどん良いところは盗み合えばよいのだが、案外そういうことができないのが公務員なのだ。
後者についても、組織であればどんなところでもある程度当てはまりそうなものが多く、どこまでが本当に役所独自と言えるかは疑問が残るが、議員対応や上司との関係などの「暗黙知」の部分をしっかり書いているのはありがたい。
それにしても、書かれていることはある種「当たり前」なのだが、難しいのは、それを実務の現場に即して実践することだ。本書は、たしかに内容自体はあまり目新しさはないものの、それを具体的な役所の実務に落とし込んで具体例で説明しており、非常に実践性が高い。
なかで印象に残ったのは「上司が判断に迷うのは、部下が上司に対して、適切な判断材料を揃え切れていないから」という指摘。
なんだか一歩間違えば誘導のようだが、いやいや、割り切ってしまえば、上司と部下の理想の関係は「誘導」で良いと思うのだ。きちんと判断材料を揃えてうまく上司を「誘導」できる部下と、そんな部下の誘導にちゃんと「乗れる」上司の関係というのが、ある意味では理想の上下関係であるように思う。う〜ん、でもこれ、誤解されそうだな。
「完璧主義より最善主義」というのも、同感。なんでもかんでも相手の求めるラインまで完璧に仕上げようとするより、その時の自分ができるベストのものを作れば良い、と考える、ということだ。これもある種の「割り切り」だが、必要以上に根を詰め過ぎる職員には、このサジェスチョンは有効だろう(ただし、仕事によっては「99%でもダメ」というものもあるので、要注意)。
それにしても、こういう本を読むと、自分の中にある仕事の進め方の「暗黙知」も言葉にしたくなってくる(そのうち文章化してみるかもしれない)。自分がどんな仕事のやり方をしているか、ひとつひとつ振り返るための「鏡」としても、こういう本は使えそうだ。仕事のやり方に迷いのある方にとっては、なにかヒントが得られるかもしれない。