自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1399冊目】『特別授業3.11 君たちはどう生きるか』

河出書房新社が出している「14歳の世渡り術」シリーズの一冊……というか、そのスペシャル・バージョン。なにしろあさのあつこ橋爪大三郎最相葉月など異色かつ豪華な執筆陣が、3.11を経てこれからどうすべきか、何を考え、どう行動すべきかを14歳に語っているという、これだけでもたいへんな「お値打ち本」なのだ。

14歳に対して語るというと、言葉は悪いが子どもダマシという印象をもたれる方もいるかもしれない。だが読んでみると逆である。著者たちはどうも、今の大人がどうしようもなく、今の社会や政治がどうにもならないから、せめて将来に希望を託したくて14歳の読者に語りかけているように思える。

ということは、本書に収められた言葉を読んでどれくらい反応できるかが、ある意味、私やあなたが「どうしようもない大人」になっていないかどうかの試金石なのかもしれない。ちなみに私の場合、読んでいて心が「ピン」と反応したのは、それぞれの授業ごとにこんな言葉であった。みなさんは、はたしてどこに反応されるのだろうか?

「3・11の後は、どのくらい本気で語れるかということが試されてきていると思います」(あさのあつこ:国語)

「人は地震津波で「死ぬ」が、原発が放出した放射性物質で人は「死ぬ」のではなく「殺される」のだ」(池澤夏樹:歴史)

「「自立」とはそのようなindependenceではなくて、むしろinterdependence(支えあい、頼り合い)のことなのです」(鷲田清一:倫理)

「最初に皆さんへ伝えたいメッセージは、日本列島は「3・11を境として、以前とはまったく変わってしまったということです」(鎌田浩毅:地理)

「税金の無駄には、二種類あります。一番目は、そもそもやらなくていい仕事をしている場合。これは本当の無駄です。すぐやめなければならない。二番目は、必要な仕事をしているのだが、お金の使い方が下手くそな場合。だいたい七割は必要なお金で、三割は無駄になっていると思えばよいのではないでしょうか」(橋爪大三郎:政治)

原発事故のあと、科学が信じられない、という声があちこちで聞かれました。私は、みんな科学を信じていたのかと驚きました。そして、星新一の言葉を思い出しました。そう。科学は信じる、信じないという対象ではなく、理解するものなのです」(最相葉月:理科)

「経済成長を望もうにも望めない状況にあるならば、その状況を理解した上で経済基盤を整えていく必要が生じてきます」(橘木俊詔:経済)

「だから僕は、避難所で話を聞く時、かならず血圧計と聴診器を持っていった。「何かお困りのことは?」と聞かれて「大丈夫」としか言わない人たちも、「血圧はかりませんか?」と聞けばだいたい応じてくれるからね」(斎藤環:保健)

「私たちが手伝うのは『彼ら』ではありません。『彼らの力』を手伝いに行くのです」(田中優:課外授業・ボランティア)