自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1349冊目】原田正誉監修『すぐに役立つ成年後見制度の法律と手続き』

すぐに役立つ 改訂新版 成年後見制度の法律と手続き

すぐに役立つ 改訂新版 成年後見制度の法律と手続き

徹頭徹尾、実用本である。成年後見制度の「使い方」が懇切丁寧にまとめられている。

本に「ついて」書くという点で言えば、こういう本が一番書きにくい。必要な人は黙ってても読むし、そうでない人に無理に勧めてもしょうがない。評価といってもせいぜい「分かりやすいかどうか」くらいしか軸の置きようがなく、それだってホントは類書をいろいろ比べてみないとわからない。ああ、やりにくい。

それでも本書を取り上げたのは、そもそも成年後見制度自体がとても大事な制度だし、特に自治体職員にとっては、「知っておいた方がよい」知識から「知らなければならない」知識になりつつあるからだ。

その背景にあるのは、言うまでもなく「高齢化」と「権利擁護」の視点である。そして、なぜ権利擁護が重要になってきたかというと、福祉サービスが「契約」というスタイルを取るようになってきたからだ。

行政による「措置」から、利用者と事業者の「契約」へ。その理念は美しいが、そこには判断能力が低下した認知症高齢者や、そもそも判断能力が十分ではない知的障害者たちまでが、事業者と対等の立場にある当事者として「契約」しなければならないという逆説が含まれていることを忘れてはならない。本来サービスの恩恵をもっとも受けるべき人々が、サービスを使うための入り口で立ち止まってしまうような構造が、この「措置から契約へ」という発想には含まれているように思われる。

この矛盾を引き受ける受け皿のひとつとなっているのが、成年後見制度である。かつての「禁治産制度」「準禁治産制度」(私が民法を勉強したころはこうだった。ああ、懐かしい)が抜本改正された2000年4月が、介護保険制度がスタートした月でもあるのは、決して偶然ではない。両者はいわば「セット」の存在なのである。

今や高齢者福祉、障害者福祉、さらには保育サービスまで、ほとんどが「契約」をベースに成り立っている。したがって、制度を理解するには、その裏側にあって制度を支えている成年後見制度についても、やはり「セット」で知らなければならんのだ。「ツール」としての本書を、あえてこの「自治体職員の」読書ノートで取り上げたゆえんである。