【1279・1280冊目】『百年文庫17 異』『百年文庫18 森』

- 作者: 江戸川乱歩,ビアス,ポー
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/10/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: モンゴメリー,ジョルジュ・サンド,タゴール
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/10/13
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「異」は乱歩、『悪魔の辞典』のビアス、そして怪奇小説の元祖ポーという強烈な3人。というか、このシリーズをここまで読んできて、3篇ぜんぶ既読だったのはコレが初めて。
○江戸川乱歩「人でなしの恋」
結婚した相手は絶世の美男。だが夫は、なぜか夜な夜な、こっそりと土蔵に足を運び……。すさまじい結末も含め、乱歩らしさ全開の一作。乱歩にしてはお話に無理がなく、クレイジーだがエレガントにまとまっている。
○アンブローズ・ビアス「人間と蛇」
ベッドの下に潜む蛇と目を合わせてしまった学者ブレイトンは、光る二つの目に射竦められて、しだいに心理的に追い詰められていく。ビアスらしいオチは、一度読んだら忘れられない。
○エドガー・アラン・ポー「ウィリアム・ウィルスン」
同姓同名、瓜二つの男に出会う恐怖を巧みに描くポーの名人芸。ドッペルゲンガーものの元祖である。ちなみに翻訳は江戸川乱歩。元祖アラン・ポーと乱歩の「競演」も見ものである。
さて、「森」はそのタイトルとはややウラハラな、心の輝きの刹那を切り取った三編。どれも「逸品」の名にふさわしいが、特にモンゴメリーの作品には感動した。
○L・M・モンゴメリー「ロイド老嬢」
『赤毛のアン』のモンゴメリーなんて、と思っていたが、読んでびっくりの感動作。プライドと自意識のカタマリのようなロイド老嬢が、一人の若い女性への献身を通して心を開く。自分を後回しにし、他人を自分に優先することで、はじめて自分を変えることができるのだ。
○ジョルジュ・サンド「花のささやき」
これはなんとも美しい一篇。花がささやき、風が語り、妖精が笑う。しかしそれを聴き取れるのは、ちいさな乙女の純真な心だけ。自然のみずみずしさが鮮やかに伝わり、感性を洗われる。
○ラビントラナート・タゴール「カブリワラ」
5歳の娘とカブールの果物売りの心の交流を描く。階級社会インドでは相当のインパクトがあったと思われるが、それを知らなくても、やさしく包まれるような短篇だ。それにしても、「森」はどこに出てきたんだろう?