自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1084冊目】宮田珠己『スットコランド日記』

スットコランド日記

スットコランド日記

WEB本の雑誌」に連載されていた日記の書籍化。「WEB本の雑誌」は前からよく覗くサイトで(特に「帰ってきた炎の営業日誌」と「作家の読書道」は必ずチェックしている)、この「スットコランド日記)もちょいちょい眺めていた。

ウェブ上でも十分面白かったが、本になっても変わらず面白い。ちなみに「スコットランド」ではなく「スットコランド」なのでお間違えなく。「スコットランドのような風景が見える」自宅マンションでの日々や、四国お遍路の記録や(これは別に本が出ている。そっちも読んでみたい)、なかなか進まない仕事やらを淡々と書いていく。

本書の中で「日記は鬱の人が書いたものが面白い」と書かれていて、それはそれで当たっている面がなくもないが、本書自体は全然鬱じゃないのに面白い。日記だから大それた事件がしょっちゅう起きるわけじゃないし、まあサラリーマンや公務員の日々よりは毎日いろんな変化があるわけだが、それでも日常というのはそんなにバリエーションがあるものじゃない。

そんな平凡な日常の中のちょっとした夫婦の会話や、子供の(ヘンな)行動や、見かけた風景やらを捉えてピンポイントで綴り、なおかつ1年にわたってそれを「読ませる」のは、カンタンそうに見えて実はとっても大変なことである。実際、ブログ日記は今や腐るほどあるが、本になっても読めるものがはたしてどれくらいあるか。だいたい、無料で読めたものを、また本というカタチで金を払って読ませるというのが並大抵ではない。

繰り返しになるが、書かれていることは、同じ幼稚園児をもつ父親がつくった泥団子に感嘆嫉妬したり、北京オリンピックを観るか仕事をするかで悩んで結局陸上競技を観てしまったり、マメをたくさんつくりながらお遍路を歩いたり、そこで67歳の外国人のおばさんと出会ったり、といった感じ。やや脱力系、かなりユーモラス系(ガマンできなくて何箇所か声を出して笑ってしまった。電車の中では読まない方がよいです)、ちょっとしんみり系の面白日記。面白そうな本もちょこちょこと紹介されているので、そのあたりも読みどころかと。

だいたい四国八十八ヶ所