【985冊目】小西砂千夫『自治体財政健全化法』
- 作者: 小西砂千夫
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 2008/04
- メディア: 単行本
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2007年6月に成立した、いわゆる自治体財政健全化法(正確には「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」)について解説した本。法制定者側の意図や狙いから制度の概要、さらには自治体サイドに求められる点について、総務省サイドの見方にも自治体の見方にも極端に偏ることなく書かれている。
内容は決してやさしくはない。少なくとも地方財政制度に関する最低限の知識がないと、読み進むのはかなりしんどいだろう。しかしその分、安直な議論に流れず、中立的なスタンスから緻密に制度の内容を解説しているので、安心して座右に置くことのできる一冊である。特に、この制度が導入されることで重要性が大幅に高まる財政部局と監査事務局の職員は、必読。
特に監査委員制度については、現状のシステムがそもそも監査制度として機能しているのかどうかも含め、非常に議論が多い部分である。自治体のOBや首長寄りの人物、議員やそのOBばかりで構成され、事務局も決して充実した体制をもっているとはいいがたい。しかし、この自治体財政再建制度の導入によって、監査委員や事務局の役割は大幅に高まることになる。むしろこの制度導入を機に、監査委員をめぐる現状を改革するくらいの気運があってもよいのかもしれない。
そもそもこの制度自体、自治体に対していろんな面で「気づき」をうながす仕掛けが施されていて、まあ総務省による「大きなお世話」と思えなくもないが、制度として周到にできているのは認めざるを得ない。地方自治という面からみてこの制度が本当に妥当と言えるかどうかはともかくとして、現実にこうした法制が導入され、その内容が一定の合理性をもっていると思われる以上、現場の自治体としては、むしろこの制度をひとつのメルクマールとして、みずからの財政状態を見直す契機にするべきであろう。その意味で、本書にも紹介されている多治見市の「多治見市健全な財政に関する条例」などは、制度をうまくテコに使いつつ財政に関する自主的なルールを定めるものとなっており、むしろこれこそが、あるべき地方自治の姿というべきなのかもしれない。