【715冊目】ルードヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

- 作者: ウィトゲンシュタイン,野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/08/20
- メディア: 文庫
- 購入: 29人 クリック: 278回
- この商品を含むブログ (200件) を見る
銭湯でめちゃめちゃ熱いお湯に漬かって、びりびりと身体中が刺激されて身じろぎもせずにいるような、そんな気分で読んだ一冊。
断章形式で短い文が連打される独特のスタイル。そのひとつひとつの文が強烈で、しかもそれが連なることで異様な迫力が生まれてくる。一切の曖昧さを排し、厳密そのものを積み上げることで論理の高みに至る。おそるべき本である。
内容を紹介するのはとても難しい。むしろ、断章のなかからいくつかをピックアップして、列挙してみたほうがわかりやすいと思われる。断章番号は省略し、著述されている順に挙げてみよう。
・世界は諸事実によって、そしてそれが事実のすべてであることによって、規定されている。
・いかなる命題も自分自身について語ることはできない。なぜなら、ある命題記号が当の命題自身のうちに含まれることはありえないからである。
・日常言語から言語の論理を直接に読み取ることは人間には不可能である。
・哲学者たちの発するほとんどの問いと命題は、われわれが自分の言語の論理を理解していないことに基づいている。
・哲学の目的は思考の論理的明晰化である。
・哲学は思考可能なものを通して内側から思考不可能なものを限界づけねばならない。
・およそ考えられうることはすべて明晰に考えられうる。言い表しうることはすべて明晰に言い表しうる。
・示されうるものは、語られえない。
・論理は自分で自分自身の世話をみるのでなければならない。
・われわれの根本原則はこうである。およそ論理によって決定される問いは、論理のみによってすべて決定されねばならない。
・私の言語の限界が私の世界の限界を意味する。
・世界と生とはひとつである。
・主体は世界に属さない。それは世界の限界である。
・論理学の命題はトートロジーである。
・論理学の命題は何も語らない。
・論理学の命題がトートロジーによって示す世界の論理を、数学は等式において示す。
・太陽が明日も昇るだろうというのは一つの仮説である。すなわち、われわれは太陽が昇るかどうか、知っているわけではない。
・死は人生のできごとではない。ひとは死を体験しない。
・神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである。
・語りえぬものについては、沈黙せねばならない。