【587冊目】芝池義一「行政法読本」
- 作者: 芝池義一
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: 単行本
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単発での紹介。こういう本は無理に組み合わせるものではない、と思う。
別に行政法が好きなわけではないのだが、新しいテキストが出ているとどうも気になってしまう。しばらく読んでいないと、なんだか読まなければいけないような妙な義務感が湧いてくる。それで、行政法の本は定期的に読むことになる。いろんな本をめぐる中で、定期的に戻ってくるベースキャンプみたいな感じだ。
本書は芝池義一氏の新刊。芝池氏にはすでに「行政法総論講義」「行政救済法講義」というしっかりとした基本書があり、塩野先生や宇賀先生の基本書と並んで以前お世話になった記憶があるが、本書はそのいわば前段、基本的な項目は網羅しつつ、深めるべき議論は限られたページ数の中でもしっかり深められており、著者の顔の見える一冊となっている。
特に、頻繁な改正や新たな判例が続く行政救済法分野は、やはり新しく出たテキストが有利である。義務付け訴訟や差止訴訟などの改正後の行訴法の解説、今世紀に入ってから続いた革新的な最高裁判例の連打などがしっかりフォローされ、全体の構造の中に位置づけられている。細部にわたる議論の中には「講義」に譲られているものも多いが、行政法全般を扱うにしてはコンパクトな分量の中で、法律、判例、学説がバランスよくおさまっている。ちょっと難しいかな、と思える部分もあるが、行政法入門の一冊としては悪くないと思う。