hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【542冊目】藤井良広「金融NPO」

金融NPO―新しいお金の流れをつくる (岩波新書)

金融NPO―新しいお金の流れをつくる (岩波新書)

どんな事業にも付きものなのが、お金の流れ、すなわち「融資」である。しかし、融資を担う金融機関はBIS規制に汲々として、営利性のみを求める融資を行い、中小企業に対しては相も変わらず貸し渋り貸しはがしが横行している。まして福祉や医療、環境といった、営利性の面からは難があるが社会的にニーズが高まっている事業に対する銀行の融資姿勢といえばお寒い限り。つまり今の日本では、社会的な側面から見ると、金融制度がなかなかうまくいかない現状にある。

その中で少しづつ増え続け、実績を積み重ねているのが、本書のテーマである金融NPOである。キーワードは「意志あるお金」。自分のお金の使い道は自分で決めたいという、当たり前といえば当たり前の要求がその背後にある。銀行に預金をするということは、ある意味で貸し渋り貸しはがしの片棒を担いでいると言えなくもないし、郵貯に至っては財政投融資として公共事業資金となってきた、いわば日本を壊してきた共犯のようなもの。それよりは、自分のお金は社会的に意義のある使い方をしてもらいたい。そういう発想をする人が、どうやら相当増えてきたらしい。

その受け皿となっているのが金融NPOだという。その特徴はいろいろあるが、重要なポイントは、その組織や事業規模がきわめて小規模であるという点。金融機関、特に銀行は合併を繰り返して巨大化し、本来は地元密着を謳っていた信用金庫や信用組合も大規模化が進み、お互いの顔が見えづらくなっている。その中で、あえて適正規模を維持し、出資者や寄付者と借受人が人的信頼でつながっているのが金融NPOである。そこでは従来の金融の論理であるところの、営利性、巨大性、匿名性がすべて裏返しとなっている。思えば昨今の金融危機は、従来型の「金が金を生む」極端な営利追求が裏目に出て起こったものである。その中にあってこうした金融NPOが登場してきたことには、重大なメッセージが含まれていると感じる。

金融NPOというと、アメリカやイギリスなどの西欧諸国のシステムを輸入しただけではないか、と言われる向きもあろう。しかし、もともと金融NPOのような存在は、かつての日本にも存在していた。それが本書でも例に挙げられている、無尽や頼母子講などの、地域コミュニティにおける金融上の相互扶助システムである。それは言い換えれば「融通」ということであろう。そうした「融通」のしくみが「プロの」金融機関による金融システムに呑まれることでいったん失われたものの、その巨大な金融システムが機能不全を起こしたことにより、自然発生的に蘇ろうとしている。本書を読んで、そういう印象をもつことができた。