自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【524冊目】政策分析ネットワーク編「政策学入門」

政策学入門―ポリシースクールの挑戦

政策学入門―ポリシースクールの挑戦

政策学とはやや聞き慣れない言葉だが、実は国内の大学で「政策」という名を含む学部・学科・研究科・専攻を有する大学は、2003年時点で69に及ぶという。その名称はさまざまであるが、いずれにせよ、政策というテーマ、あるいはトピックは、学問の対象として相当広まっているということができよう。

思えば政策(厳密には「公共政策」)の立案は、長い間中央官庁の独占であった。中央官庁が作り上げた全国一律の政策を都道府県や市町村が実施する、という役割分担が当たり前だった。しかし、それがバブル崩壊後あたりから徐々にゆらぎはじめた。官僚への不信、公共工事主導の「政策」の限界、国民の多様化、「官から民へ」「国から地方へ」の流れが生じたのが90年代。それは、上に挙げた「政策系」学部や学科等を擁する大学が急激に増えた時期でもあるという。

そして今や、中央官庁のみならず先進的な地方自治体、あるいは政策NPOとでもいうべき存在、企業内シンクタンクなどが百花繚乱、それぞれが新たな政策づくりに取り組む時代になりつつある。まさしく「政策学」が要請されているのである。本書はその中で日本における「政策」「政策学」のあり方を多面的に論ずる一冊。その核となっているのが、行政や政治、経済から福祉、教育、さらには国際政治に至るまで、14のクラスタを立てて、それぞれの分野における「政策」のありようとその前提となっている状況を記述した第2部。個々の論述はページ数も少なく、コンパクトでやや無難にまとまっている感はあるが、通して読むと政策をめぐる環境を俯瞰することができる。また、政策学の今後を若手研究者が記述した第4部も面白い。政策研究のための実践的なツールの紹介からポリシースクールの日米比較、日本の政策学のあるべき姿などが生き生きと記述されている。