自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【522冊目】ダニエル・ピンク「ハイ・コンセプト」

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

現代はよく「情報化社会」と呼ばれる。そうであるならば、本書は「ポスト情報化社会」の道標を示した本である。

まず、厳しい現実認識が前提にある。これまでの「情報化社会」では、高度な知識や専門性、論理的思考といった能力が秀でた、いわゆる「ナレッジワーカー」が主役とされてきた。ところが著者によると、こうした時代はもはや終りが見え始めている。その原因を、著者は「豊かさ」「アジア」「オートメーション」の3点とする。物質的ニーズが満たされ、アジアでは低賃金で高い能力をもった技術者が現れ、システム化された作業はすべて機械が行うことになるのである。言い換えれば、知識や論理、分析といった、いわゆる左脳的な能力に偏った従来の「エリート」たちが安泰とはいえなくなる時代が来るのだという。

では、情報化時代の「次」に来るのはどんな時代か。著者はそれを「コンセプト」の時代、右脳的な直観や美的感覚、センスや共感力などが優位となる時代とする。そこで必要とされるのは、次の6つ。この6つの提示こそが、本書の核心である。

1 「機能」だけでなく「デザイン
2 「議論」よりは「物語
3 「個別」よりも「全体の調和
4 「論理」ではなく「共感
5 「まじめ」だけでなく「遊び心
6 「モノ」よりも「生きがい


ポイントは、後者の重要性を強調しつつも、前者の役割を完全に否定しているわけではないという点。つまり、「左脳だけ」から「右脳だけ」というのではなく、両者のバランスが取れていることこそが重要とのこと。まあ、それはそれとして思ったのだが、本書で書かれている具体例や重要なポイントって、細かいところでいろいろ違いはあるが、編集学校でやった「編集」そのものである、ということ。本当に「第四の波」がこういうかたちで来るかどうかはわからないが、論理や分析だけの世界よりは、物語や遊び心のある世界のほうが楽しいことだけは確かだろう。