【515冊目】半藤一利「昭和史」
- 作者: 半藤一利
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2004/02/11
- メディア: 単行本
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本書ほど、読んでいて歴史を知ることの大切さを感じた本はなかった。
そもそも昭和史は「苦手分野」であった。もともと歴史自体疎いのだが、特に本書で書かれている、日露戦争から太平洋戦争までの流れはよく分かっておらず、個々の事件は知っていてもどういう順序で、どういう因果関係で起きていたのか、ほとんど知らなかったことが本書を読んでわかった。特に、ほとんど一本道と思っていた戦争への道筋が、実は無数の分かれ道を経てきたこと、言い換えれば無数の事実と判断の集積の上に成り立っていたことには、歴史とはそんなものとはいえ、唖然としてしまった。その中には、確かにやむをえないものもあるが、明らかにミステイクとしか思えないものも多かった。また、後から言うのは簡単なことなのだが、いったん犯した誤りを認めず、その場しのぎで糊塗し続けることで、さらに悲惨な状態に陥っていくありさまは、今の日本でも似たような事案が見られるだけにおそろしい。
本書はそうした「赤い夕陽の満州」から「晴天の下の玉音放送」までを、徹底した細部の積み上げの中でひとつひとつの分岐点を検証しながら、やわらかく明瞭な言葉で綴っていく。また、著者自身の視点や評価がその中に踊っているのも良い。中にはそれを嫌がる人もいるだろうが、そもそも歴史を語る際に客観に徹することは不可能であり、そうであれば、むしろこれくらい主観を出していただいた方が正直でよいと思う。歴史に学ぶ、ということの意味を考えさせられる名著である。