自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【486冊目】吉田利宏「ビジネスマンのための法令体質改善ブック」

ビジネスマンのための法令体質改善ブック

ビジネスマンのための法令体質改善ブック

「ビジネスマンのための」とあるが、自治体職員にとってもきわめて有効。というか、法令との接触頻度からすれば、むしろ自治体職員向けとも言える。

本書の著者は元衆議院法制局職員で、前にも似たようなテーマの本を読み、ここでも紹介したと思う。本書もその内容をほぼ踏襲するもので、ユーモアを交えつつ法律の構造や考え方を分かりやすく説明する、というスタンスも同じ。どちらかというと本書のほうがコンパクトにまとまっているが、まあ、どちらかを読めば足りるかな、という感じ。取り上げられているのは、「及び・並びに」「又は・若しくは」など定番のルールから、「その他」「その他の」、「みなす」「推定する」など、基本的なところが中心。個々の表現だけではなく、法律全体の構造や附則の重要性、さらには個々の規定に関する判例や国会での質疑の内容の調べ方など、リーガル・リサーチの面でも充実している。とにかく実用に徹した一冊。

なお、本書はたとえが異常に上手い。「お父さんの小遣い」で附則を説明するのは前著でもなさっていたが、「前項の場合」と「前項に規定する場合」を合コンで説明したり、法令の階層性をお相撲さんになぞらえたり、経過措置をカードのポイント引き継ぎで説明したり(どんな説明の仕方か気になる方は本書をお読みください)、よくぞこれだけ考え付くものである。著者は現在、法制局を退職して執筆業や講演活動に専念されているらしいが、納得。