自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【466冊目】岡嶋二人「99%の誘拐」

99%の誘拐 (講談社文庫)

99%の誘拐 (講談社文庫)

岡嶋二人が「クラインの壺」を最後に「解散」したのは、1989年。本書が刊行された翌年であり、本書が第10回吉川英治文学新人賞を受賞した年であった。いわばその絶頂期に、徳山諄一と井上泉(夢人)からなるこの稀有なコンビは解散したことになる。

つまり、本書はその絶頂期の作であり、岡嶋二人の代表作と言ってよいと思われる。そして、その名に恥じない面白さである。二つの誘拐事件の重なり合いといい、ゲームじみた展開といい、さらには当時最先端のパソコンを使ったトリックといい、とにかく最後まで目が離せない。こういうのは感想やら書評やらを書くこと自体野暮であろう。ただ、この手のエンターテインメント小説は入れ替わりが激しく、秀作が次々登場するため(そのこと自体はとても良いことなのだが)、ちょっと前の名作、傑作がどんどん忘れ去られていく傾向があるように思われる。特に本書の場合、パソコンを小道具に使っていることがある意味裏目に出てしまい、どうしてもある種の古臭さを感じてしまうことは否めない。時代を超える小説というのもあるが、本書は時代に密着して、その先を行こうとしたところがあり、それがかえって時代に縛られることになってしまっているのかもしれない。