自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【454冊目】池田清彦「環境問題のウソ」

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

行き過ぎたエコ志向の反動か、いわゆる「アンチ環境本」が書店を賑わせている。前にクロード・アレグレの本を読んで開眼し、いくつか読んだのだが、論理やデータ考証が破綻していたり感情論に流れすぎていたりして、なかなか適切な本が見つからなかった。

本書は、そうした中にあってなかなか読み応えのある一冊であった。特に、若年層向けの「ちくまプリマー新書」としてこうした本が書かれた意味は大きい。どこが良いかというと、まずいたずらに結論を急がない。論理の運びは丁寧で、言い換えれば一分の隙もない。データの扱いも理にかなっている。それでいて説明はものすごくわかりやすい。わかりやすすぎて逆に騙されているような気がしてくるのが、欠点といえば欠点。

本書ではCO2やダイオキシン外来種問題などが俎上に載せられているが、著者は別にこれらが自然に及ぼす害悪を否定するわけではない。問題は、こうしたものを削減するのにかかるコストと、それによる効果のバランス(本書の言い方で言えば、メリットとデメリット)である。たとえばCO2。著者は様々なデータをもとに、人為的なCO2の排出が温暖化に与える影響はごくわずかであることを論証する。その上で、あえて人為的温暖化論を肯定した上でこう書く。「京都議定書が完璧に実行されたとしても、百年後の気温上昇をほんの六年ほど遅らせることができるだけなのだ。全く何もしなかった時に2094年に実現されるはずの気温上昇(略)を2100年に遅らせるだけだ」この指摘に、自治体の環境部局はどう答えるのだろうか。

ダイオキシンや、ブラックバス等の外来種問題も同断だ。著者の指摘は痛烈だが的確、強固なデータと論理に裏付けられており、揺らぐところがまったくない。そして、国やメディアのアナウンスに何でも「右へならえ」となるのが我が国の世論の通弊であるが、本書はそうした風潮への厳しい警告となっている。自治体もまた、特にエコロジーなどの「善」とされる政策については、率先して国やメディアの言葉に乗っかっているのが現状だ。それが全国的規模での莫大な浪費につながっていると本書は指摘する。環境問題に限らず、分権時代の自治体だからこそ考えなければならないことであろう。