hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【442冊目】上山信一・伊関友伸「自治体再生戦略」

自治体再生戦略―行政評価と経営改革

自治体再生戦略―行政評価と経営改革

行政評価をテコとした行政改革のあり方を論じた一冊。

行政評価は、数年前から鳴り物入りで多くの自治体で導入されたが、そのわりにほとんどのところでは、導入後も導入前と大して変わらない政策運営をしているように思う。あれはいったいなんだったのか、といった感じであったが、なぜそうだったのかは本書を読めば見えてくる。

本書では行政評価を4つの類型に分ける。正確には、中央集権的−現場主義のベクトルと、行政組織内−行政外から、というベクトルによる4象限にそれぞれが位置づけられる。

A型(査定管理)モデルは、多くの自治体でブームに乗って導入された行政評価の大半であり、従来型の統制的・積み上げ式の、本書でいうところの「予算査定ツール」である。そして、これをいくらやったところで自治体は変わりはしない(変わりたくないと思っている自治体こそが、このA型を積極的に導入したともいえる)。

B型(TQM)モデルは、行政内部における評価という点ではA型と共通だが、現場における自律改革を促すことで職員の意識改革を引き起こすツールである。福岡市役所のMOVEシート、静岡県の業務棚卸表などが例として挙げられている。C型(住民コミュニケーション)モデルは行政機関外部の、住民の目線を入れる。日本での例としては青森県庁の政策マーケティング、厚生労働省の「健康日本21」、姫路市や東京都の「福祉サービスの第三者評価」(ただし、C型として十分なものとはされていない)。このC型になってくると、いわゆる住民主権を相当取り入れていないと実施できない。評価を委ねるということは、自治体政策の舵取りの大きな一部を委ねるのと同じことだからである。

さらに、究極的な行政評価のあり方として提示されているのが、B型とC型が融合したD型(ニュー・パブリック・ガバナンス・モデル)である。内部における意識改革と外部からのチェックを融合するということになるのだが、ユニークなのは、これが単一の評価で完結するのではなく、住民が主体的に「参画」しつつ、多段階的・分散的に行われるということである。つまり複数の評価がそれぞれのレベルで行われるのであって、評価自体の評価というややこしい問題も出てくる。むろん、これ自体は理念型であるのだが、重要なのは行政評価というツールを機械的に導入するのではなく、目的と効果(うまく使えば、確かにこれはものすごい力を持っている)を見据えて意識的に使っていくことなのだろう。