【412冊目】公会計改革研究会編「公会計改革」
- 作者: 公会計改革研究会
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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公会計改革について耳にする機会が多い。これまでの現金主義ベース、フロー中心の財務情報に加えて、資産や負債といったストック面の財務情報を把握することが、その主眼となっている。こうしたストック面の財務情報開示は、民間企業が現に行っているものであるが、公会計改革はその基本的な考え方を取り入れつつ、単なる民間企業会計の移入ではなく、これを踏まえた独自の方法論に基づいて行われなくてはならない。単なる「民間のすぐれた方法を導入」ではないのである。
本書は、神野直彦氏を座長とする「公会計改革研究会」のメンバーが各章を執筆している。トップバッターは神野氏であるが、この「公会計改革の視点」と題する第1章が、実は一番面白い。政府と市場の違い、決算重視の企業会計と予算重視の政府会計の相違など、根本的なレベルから現状の公会計改革の問題と、進むべき方法を示すものであり、座長ながら本書の著者の中で一番厳しく公会計改革のあり方を批判するものとなっている。
それ以外にも、公会計改革の背景にあるNPMの解説、ディスクロージャーの重要性などについてもそれぞれ専門家による詳細な解説が行われており、公会計改革そのものの中身もさることながら、それが現在の地方分権やそれに伴う地方自治のあり方の変化、さらには情報公開の必要性といったさまざまな事情の中でどのように位置づけられるか、という点がよく分かる構造になっている。また、自治体の財政現場を少なからず混乱させたと思われる、「基準モデル」と「総務省方式(改訂)モデル」のそれぞれについても、実際にこれらの策定に関わった執筆者による解説がなされている。
神野氏の指摘は胸に刻むとしても、自治体現場においては、公会計改革は待ったなしで進んでいる。本書はそのありようを幅広い視点から示したテキストとなっている。特に「役所が何のために複式簿記やら減価償却やらをやる必要があるの?」という方には、その意味合いや問題点を多角的に描き出してくれる本書を一読されるとよいかもしれない。